
タイでは、徴兵されるかどうかをくじ引きで決める。
赤を引けば兵役へ、黒を引けば免除。
これは「赤黒くじ」と呼ばれ、毎年4月、タイ全国のニュースをにぎわせる。
会場は各地の学校や集会場。

すでに若者たちが列をつくっていた。
腕には、番号の書かれたテープ。


家族や友人たちも見守りに来ている。

制度上、原則として21歳の男性が徴兵の対象となる。
ただし、全員がくじを引くわけではない。
学生時代に3年間(年間80時間ほど)の軍事訓練を受ければ、徴兵は免除される。
当然、自ら志願して軍隊に入る道もある。近年は、安定した収入や待遇を求めて志願する若者も増えているという。
兵役期間は原則2年。志願することで1年短くなる仕組みもある。(学歴によって異なる)
確実に期間を短くするか、くじに運をまかせるか。なんともうまくできているというべきか。
こうして志願者などを除いた残りの必要人数を、くじ引きで決めるのだ。
選ばれる人数は、そのときによって変わる。
3人に1人ほどの地域もあれば、私が見た会場では10人に1人ほどに見えた。
流れは、受付、身体検査、そしてくじ引き。

身体検査では、健康状態や体格を医師が確認する。
トランスジェンダーの人も手続きに参加するが、医師の診断書などをもとに兵役の対象外と判断される場合がある。
対象外となったトランスジェンダー女性たちは取材を受けていた。この光景はSNSやニュースでも話題になる。


そして、くじ引きが始まる。
職員が、ひとつひとつ数を数え、くじを容器に入れていく。

準備が進む中、くじを待つ若者たちの表情は硬い。


名前を呼ばれた若者が、一人ずつ前に出てくじを引いていく。


なかには若い僧侶の姿もあった。

「黒!」


黒が出るたびに、大きな歓声が上がる。
不安そうに見守っていた家族や友人たちも、もう大喜びである。




一方、赤を引いた人は、その瞬間に徴兵が決まる。



赤が出たときのほうが、歓声は大きい。
赤が一枚減れば、その分、残された人たちが赤を引く確率も下がるからだ。

会場が赤を喜ぶ一方で、その家族にはつらい歓声だった。



赤を引いた本人たちは、そのまま徴兵の手続きをする机へと案内されていく。
背後では、まだ歓声が続いている。こちらでは、淡々と事務作業が進む。


手続きを終えると、家族と一緒に会場をあとにする。
赤か黒か。くじの結果はその場で決まる。
そこから先は、また別の話だ。




■正式名称:タイ徴兵選抜(การตรวจเลือกทหารกองเกินเข้ากองประจำการ)
■開催時期:毎年4月(日程は地域によって異なる)
■開催場所:タイ全国の学校・集会場など、各地域の指定会場
■見学・撮影:今回の会場では軍の担当者が気さくに対応してくれ、撮影場所なども案内してくれた。見学や撮影の際は、関係者への敬意を忘れず、現場の指示に従いたい。